転職活動を始めて、ざっくりと条件面(給与、勤務地、福利厚生など)で応募先を絞った後、次にやるべきは「企業分析」フェーズ。
なぜ「企業分析」をする必要があるか思い出してみてください。
新卒採用の際には「エントリーシート」を作成しましたよね?
一方で、転職活動では「エントリーシート」はありません。
代わりに「職務経歴書」を通じて
<私はこんな人物像で、こんな風に御社に貢献できますよ>
ということを企業に納得してもらえるように書く必要があります。
そのために、必要なのが「企業分析」なんです!

でも…みなさん、「企業分析」って、どこまでやってますか?
- 求人票をじっくり読む
- 会社のHPをチェックして、理念や事業内容を理解する
- 業界全体の特性を調べてみる
これらは基本的なステップですが、本当にそれだけで大丈夫でしょうか?
企業分析で自分との「相性チェック」をしよう!ポイントは「相手がどんな価値観で、どんな生活をしているか見ること」にあり

私の考えでは、企業分析の最終目的は「会社との相性チェック」です。
いくら自分が憧れている企業だったとしても、
相手(企業)から求められる「何か」が自分に備わっていなければ、
本当の意味で「相性が良い」とは言えません。
だからこそ、自己分析を通じて<客観的な自己評価>を終えた後に、企業分析に取り組むのが理にかなっているのです。
具体的には、以下のような観点から「相性チェック」を行っていきます
- 会社の事業フェーズはどの段階か?
(例:急成長中のベンチャーか、安定した成熟企業か) - 自分のスキルが、会社のどの部分に貢献できそうか?
- 自分のパフォーマンスが最大限に発揮できる環境が整っているか?
もっと言えば、企業分析とは「企業をヒトとして捉える」こととも言えます。
たとえば、人と人が初めて出会ったとき、「この人ってどんな人なんだろう?」と無意識にいろいろ考えますよね。
- 「趣味や価値観は合いそう?」
- 「自分と共通点あるかな?」
- 「オフの日は、どんな過ごし方をしているのかな?」
企業分析もまさにそれと同じ。
企業という“相手”の姿をありのままに知ることで、自分とのフィット感を確かめていくプロセスなのです。
企業分析もまったく同じ。
- 「考え方や価値観(事業、理念)は?それって自分と重なる?」
- 「どんなことを得意として儲けてる?(業界・業種分析)」
- 「一緒に働く人たち、どんな日常を送っているんだろう?」
そうやって企業を見ると、ぐっとリアルに「合う・合わない」が見えてきます。
企業の“ニオイ”を感じ取る分析方法
では、具体的にどう分析するのか?
ここでは「定性分析」と「定量分析」という2つの軸で深堀りしていきます。
■定性分析:数字に見えない“企業の顔”を読む

定性分析とは、企業の文化や価値観、戦略の方向性、経営者の人となりなど、「数値には表れない空気感」を読み取る分析のことを指します。
正直な話、この定性分析は転職活動において“最低限”押さえておくべき項目です。
というのも、どれだけ条件が良くても、「自分の肌に合うかどうか」という相性が合わなければ、早期離職やストレスの原因につながってしまうからです。
逆に言えば、定性分析を怠ると、入社後に「こんなはずじゃなかった…」となるリスクが格段に高くなるということ。
企業選びにおいては、給与や待遇といった定量的な条件だけでなく、「その会社で自分が自然体で働けるか?」を見極めることが非常に重要です。
実践!定性分析|業界の「風土」から企業のカラーを感じ取る
業界分析を通じて、企業の「空気感」が見えてくることがあります。
たとえば以下のような観点から業界を見てみると、
その業界で働く人の特徴やビジネスの姿勢が見えてきます。
- 業界構造(競合の多さ、新規参入のしやすさ、買い手・売り手の力関係)
- 市場規模や成長性
- 技術革新や規制などの業界トレンド
これらを踏まえることで、「その業界に属する企業のイメージ」がより具体的になります。
例)IT-Web業界の業界特徴は「トレンド・流行・スピード」

IT業界は、技術革新やトレンドの移り変わりが非常に速いのが特徴です。
プロジェクトのサイクルも短く、「完成させて終わり」ではなく、次々に改善・変化を求められることが日常的に起こります。
つまり、つねに「新しいことへの挑戦」が前提となる世界です。
中でもスマホゲーム業界は、その特性が特によく表れている分野と言えるでしょう。
たとえば「○○コラボ」といった期間限定イベントや、新キャラクター・新機能の追加などは、飽きやすいユーザーの関心を引きつけ続けるための重要な施策。
この業界では、スピード感・柔軟性・そして何より“アイデア勝負”が非常に重視されます。
こういった環境で働く場合、広報・デザイナー・プランナーといった「表に出る職種」だけでなく、法務・経理・人事などのバックオフィス職種においても同じようなスピード対応が求められることを理解しておく必要があります。
特に、急成長中の企業やスタートアップでは、まだ制度やルールが整いきっていないケースも少なくありません。
そうした中で、「このケースはどう解釈する?」「どうすれば業務として回せる?」といった思考が求められる場面が多くあります。
前例がないからこそ、過去の知識や形式にとらわれすぎず、変化を前提に“自分で考え、形にしていく力”が、バックオフィス職でも問われるのがIT業界のリアルです。
例)同じITでも、通信インフラ業界の特徴は「安定・信頼・変わらないこと」

同じIT業界であっても、固定通信や無線通信は「電気・水道・ガス」などのインフラ業界と親和性のある業界。これらは、安全・安心・安定供給が最優先される世界です。
法規制や社会的信用も重視され、マーケティングで「飽き」を気にするようなことは、ほとんどありません。
だからこそ、「変わらないこと」が信頼につながるとも言えます。
その一方で、変化や新しい取り組みには慎重になりやすい業界です。
たとえば、DXやシステム導入を担当する人には、前例のない提案を、少しずつ現場に浸透させていくような、丁寧な根回し力や粘り強さが求められる場面も多いんです。
つまり、業界分析とは「どんな空気の中で働くことになるか」を知るための土台づくりでもあります!
(※同じような観点で、業種や職種の適性も見ておくと、より深く理解できます)
実践!定性分析|「企業戦略」からその会社の“勝ち筋”を読み解く
企業分析では、「どんな戦略で勝ちにいっているのか?」を読み解くことも大切です。
具体的には、こんな観点から見ていきます:
- どんな事業を展開しているのか?(=事業ポートフォリオ)
- 他社とどう差別化しているか?
- M&Aや業務提携、新規事業などの動きはあるか?
こうした情報を掘り下げていくと、その会社が「なぜその事業を選び、どんな思いで取り組んでいるのか」という“内面”の部分が少しずつ見えてきます!
たとえば、会社の沿革や創業時のエピソードを見てみる。
そうすると、創業者がどんな価値観を持ってスタートしたのかが分かります。
そして、その価値観は今の経営方針や事業選択にも色濃く残っていることが多いんです。
また、M&Aや新規事業の立ち上げに注目すれば、「この会社は今、どこへ向かおうとしているのか?」という未来志向・成長戦略も読み取ることができます。
企業戦略は、単なるビジネスモデルの話ではありません。
その会社の「勝ち筋」が、自分の志向や価値観と重なっているか?
一緒に走っていきたいと思える方向性か?
これが、企業選びの大きな判断軸になります!
実践!定性分析|経営陣の評価|社長や幹部の“人柄と実績”を見る

会社の文化や考え方を深く知るうえで、経営層の言動や実績に注目することはとても大切です。
たとえば、その人がどんな役割を担ってきて、どんな成果を上げてきたのか?
そこにどんな想いやマインドがあったのか?
こうした情報を追っていくことで、会社の“リアルな価値基準”が見えてきます。
- 社内で評価される人物像はどんな人?
- 昇進につながる行動って、どんなもの?
- トップはどんな価値観を大事にしている?
特にトップが「言っていること」と「実際にやってきたこと」が一致しているかどうか。
そこには、その会社の文化や信頼感がにじみ出ます。
経営理念やビジョンだけじゃなく「実際にどんな意思決定をしてきたか?」を見ていくと、
その企業の“内側の健やかさ”が、自然と伝わってくるはずです。
実践!定性分析|ブランドと文化|実際に働く「空気感」を想像する

企業を見るときは、「外からどう見られているか」と「中の人がどう感じているか」の両方を意識するのがポイント。
たとえば、
- ブランドイメージや顧客からの信頼
- 従業員の士気や働きがい、離職率
これらは、会社の空気やカルチャーを知るヒントになります。
口コミサイトや社員インタビュー、SNSなどからは、リアルな声や雰囲気が見えてきます。数字や制度だけではわからない、“この会社のニオイ”を感じ取ってみてください。
実践!定性分析|SWOT分析|強み・弱み・機会・脅威を整理する
企業を客観的に把握するために使えるのがSWOT分析。以下のような視点で整理することで、自分にとって「合うかどうか」が見えてきます。
SWOT分析は、“外から見える強みと弱み”を言語化する手段。定性・定量両面から情報を集めて、この枠組みに落とし込むことで、企業の全体像がクリアになります。
■定量分析:数字から“企業の地力”を読み解く
定量分析とは、財務諸表などの数値データをもとに、企業の財務体質や収益性、成長性などを客観的に評価する手法です。
やや専門的な内容ではありますが、できる範囲で基本的な指標を押さえておくことが望ましいでしょう。
特に、経営企画・事業企画・会計に関わる職種などは要注意!
財務諸表や経営分析の知識が求められるポジションへ転職する場合は、採用担当者から「数字をどう読み取っているか」まで見られる可能性が高いため、その点について自分形の言葉で説明できるようにしておく必要があります。

● 収益性分析
企業がどれだけ効率的に利益を生み出しているかを測る指標です。以下の項目を確認するとよいでしょう。
- 売上や利益の成長率
- 営業利益率、経常利益率、純利益率
- ROE(自己資本利益率)、ROA(総資産利益率)
● 安全性分析
財務の健全性や、借入に対する依存度を確認するための指標です。
- 自己資本比率(財務の安定性)
- 流動比率・当座比率(短期的な支払い能力)
- 有利子負債倍率(借入への依存度)
これらの指標については、可能であれば過去5〜7年分程度の推移を確認し、中長期経営計画と照らし合わせて達成状況を見ると、企業の「実行力」や「一貫性」などが見えてきます。
そうした数値の流れを追うことで、「この企業は堅実に伸びているな」「投資回収に時間がかかっているな」など、企業の特性を感覚的にもつかめるようになってきます。
「企業分析=感覚 × 情報」

企業分析のゴールは、数値(定量情報)と空気感(定性情報)の両面から企業を捉え、それを“自分の言葉”で語れるようになることです。
求人票や企業HPに書かれていることをただ暗記するのではなく、「この会社はどんな価値観で動いているのか?」「どんな考え方の人が多いのか?」を、自分自身の視点で言語化することが大切です。
たとえば、「この会社、なんとなく合いそうだな」「ちょっと違和感があるな」という直感が湧くことがありますよね。
その“ニオイ”のような感覚を裏付けるためにこそ、企業分析があります。
数字からは「どれくらい成長しているか」「収益性や安定性はどうか」が見え、定性分析からは「現場の雰囲気」「経営の価値観」「社員の思考スタイル」など、目に見えない情報が浮かび上がってきます。
大切なのは、数字も雰囲気も“他人の言葉”で終わらせず、自分の言葉で理解し、自分にとって合うかどうかを判断すること。
企業分析とは、その判断力を磨くための大切な準備なのです。
企業分析力を「簡単に高める」方法は初対面の人との会話にある!

個人的におすすめしたい「企業分析」のトレーニング方法があります。
ちょっと意外かもしれませんが…
「初めての人と会う」ことをイメージする方法なんです。
と思われた方へ、理由をご説明します。
たとえば、あなたが誰かと初めて会ったとき、無意識にこんなことを考えながら話していませんか?
- 「この人は、どんな人なんだろう?」
- 「どんなことが好きで、自分と共通点あるかな?」
- 「休日は何をしてるんだろう?」
そんな風に、相手の価値観や雰囲気を探るように、企業にも同じ視点で向き合ってみるんです。
初対面の人を企業に置き換えると、こんな見え方ができる!
会社をただ「大きな組織」として漠然と見るのではなく、ひとりの人間にたとえて観察してみると、その企業との共通点や自分との相性が見えやすくなります。
- 「この会社は、どんな会社なんだろう?」
- 「得意なこと(事業内容や大切にしている理念)は何?」
- 「自分と重なる部分は?」
- 「働いている人たちは、どんなふうに過ごしてる?価値観は合いそう?」
これこそが、まさに“ニオイがわかる”企業分析なんです。
(なので「定性分析」と「定量分析」、両方の力が高められるほどに企業への解像度が高くなっていく。。だから面接でも盛り上がります!)
あなたに合った企業を見つけるには、スペックだけじゃなく、人としての相性や空気感を知ることもすごく大事。
面接の前に「人に会う」気持ちで企業を見てみてくださいね。
まとめ:企業分析を元に、自分と価値観の合う会社に出会いに行こう

転職は、人生の大きな選択。
だからこそ、会社を“数字”だけでも、“雰囲気”だけでも見てはいけません。
- ヒトとして向き合うように企業を見る
- 情報を集め、仮説を立て、自分なりに言語化する
- 「この会社のメンバーと働きたい」と思える根拠をつくる
これが「ニオイが分かるレベルまでやる」企業分析です!


