はじめに|客観的な視点をもった「自己分析」と求人票から見える「企業分析」から見るマッチングの図り方

- そろそろ転職しようと思って、エージェントに登録したけど…
- 紹介される求人が多すぎて、どうしていいかわからない!
- 「私にマッチする求人、教えて!!」
一般的に、転職活動を進めるうえで「自分にマッチした求人は?」「求人票はスペックだけ確認できれば十分でしょ?」と思う人は多いです。
私が転職エージェントをしていた頃、よく思っていたこと。
それは…
ということ。
もちろん、転職は給与を得るための会社選びの手段です。
ですが「条件面だけで決めてしまう」という転職をして、後悔する人がとっても多い。
具体的には、
このように考える方は意外と多いものです。
ですが、こういった条件面だけで入社を決めてしまうと、実際に働き始めてから「思っていた環境と少し違った…」と感じて早期離職につながることも少なくありません。
そこで、この記事では私が転職支援をしたB子さんの体験談を事例として、初心者でも迷わずに(ちょっとの努力さえすれば)後悔のない転職をするヒントをお届けできればと思います。
この記事を読めば、仕事内容や条件・企業のブランド力といった「スペック転職」ではない、あなたへフィットした企業を見つけるための学びをご紹介します。
00_求人票の読み解きオフ会で、B子さんと出会う ―

私は、もともと転職エージェントとして法人営業を担当してきました。
そのなかで培ったのが、求人票に書かれた情報を表面的に捉えるのではなく、
そこから 「企業の本質」 をつかむための独自の分析方法です。
そのノウハウをベースに、転職初心者でも実践しやすい『求人票の読み解き方』オフ会を開催しました。
オフ会では、複数の求人票を題材にしながら、
- どんな観点で企業を分析すればよいか
- そこから「面接で聞くべき質問」や「応募の可否の判断」をどう導くか
といった点をケーススタディ形式で学んでいただく内容です。
参加者同士で意見を出し合い、視点を広げることも大きな学びになりました。
その場で私が強く印象に残ったのが、B子さん。
ちょっとした情報から多角的に物事をとらえ、点と点をつなげて理解を深めていく力がある――「センスの良い方だな」と感じたのです。
そして後日、転職のご相談をいただき、職務経歴書を拝見したときに、その第一印象に納得しました。
これまでのご経験から滲み出る姿勢や行動が、まさにオフ会で見せてくださった視点と重なっていたのです。
01_【他者による自己分析】職務経歴書から見えたB子さんの人物像

B子さんのご経歴は、誰もが知る大手企業にて広報・マーケティング職を2社ご経験されています。
書類から伝わってきたのは、
- 主体的に物事を進められる力
- 周囲を巻き込みながら協力関係を築く力
- 強い向上心
といった点でした。
読み手にこれらを印象づけたのは、Before/Afterでわかる明確な実績です。
特に数字を伴った成果は、B子さんの高い行動力とお仕事に対する強い意欲を感じさせました。
さらに面談(キャリアカウンセリング)を通じて、次のような強みも浮き彫りになりました。
- ファン心理を理解し、期待に応えるコンテンツを企画・実行する力
- チームと協力し、成果や喜びを共有できる協調性
- 現場に繰り返し足を運び、ファンの満足度を高める探究心と行動力
これらの要素が合わさることで、B子さんは「成果を出せる人」であるだけでなく、周囲と共に価値を生み出す人材としての魅力を持たれていることが伝わってきました。
02_【キャリアカウンセリング】向いている組織環境を分析する

ご経歴や価値観から、B子さんが転職先に求めていたのは、
- 部署規模が10名程度とコンパクトであること
- ご自身の企画や「新しい挑戦」を応援してくれる社風
- チームワークを重視する環境
といった条件でした。
一方で、私自身が拝見し・キャリアカウンセリングを通じて「加えて重要ではないか」と感じたのが、次の2点です。
- 上意下達ではなく、意見が通りやすいフラットな組織体制
- 部署を横断して共通の目標に向かうような組織文化
そのため、もし面接に進まれた際には、
「ぜひ直接訪問して、実際の雰囲気を肌で感じてみてください」 とお伝えしています。
「中小の特化型エージェント」の初回面談もしくは
「ココナラ」のキャリア相談!
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03_【企業分析】ご相談のあった応募先について

B子さんは人材紹介からの紹介求人が多数ありました。そして、応募先の選定には悩まれていました。
なぜかというと、
応募先選定にあたっては「企業分析」の視点を踏まえて「自己分析」を照らし合わせる力が必要になるからです。
「自分の力が発揮しやすい環境」や「自分の強み」 は、ご本人にとっては当たり前すぎて気づきにくく客観視が難しい。
一方で、周囲からはその部分こそが評価されることも少なくありません。
非常に鋭い視点を持つB子さんでさえ、求人票を前に「自分と企業の相性」に関してはピンと来ていないご様子でした。
実際に検討されていたのは、次の3社です。
- A社:大手上場グループ企業(正社員)
- B社:大手メーカー系の上場企業(正社員)
- C社:非上場のイベント系企業(契約社員)
ご本人の第一希望はA社。
「大手上場グループであり、メーカーが母体」という安心感から、「ここを選んでおけば間違いない」という印象を持たれていました。
しかし、私自身がこの中で最もマッチしそうだと感じたのは、むしろC社でした。
C社がマッチすると感じた理由(企業分析×自己分析(他者分析))

B子さんにとってC社が合いそうだと感じたのは、次のような理由からです。
- 大規模イベントを主催する組織であり、
社員全員が「イベントの成功」という同じ目的に向かって動いている - 全員が契約社員スタートである点から、
一人ひとりのコミットメントが強く、組織としての一体感が感じられる - ビジネスモデルから小規模な組織体制が想定され、
チームワークを重視するB子さんの志向に合致している
もちろん条件面での不安はありましたが、ご本人も「やはり気になる」とおっしゃっていました。
そこで私は、次のようにご提案しました。
「まずは応募して、契約社員スタートの理由を直接確認されてみてはどうでしょうか? そのうえで必要があれば、業務委託という形も検討いただけないか、提案資料を準備してみてもよいと思いますよ。」
だからこそ理由を確認しつつ、業務委託としての可能性を考えてもらえないか打診できるように
「お土産」として提案資料を持っていってみては?とお伝えしています!
04_【企業分析を面接で深掘】面接を通じて見えた、各社の違い

実際に選考へ進んでみると、それぞれの社風の違いが浮き彫りになりました。
- A社・B社:
面接の中で「社内の雰囲気を知りたいので、社員の方とお会いできないか」と確認したものの、担当者からは気乗りしない様子の返答や、納得のいく回答が得られませんでした。
そのため、組織の実態が見えにくい印象が残りました。 - C社:
初回面接から社内メンバーと直接顔を合わせる機会を設けてもらい、組織の透明性や距離の近さ、フラットさを実際に感じ取ることができました。
この時点で、B子さん自身も「自分の志向性に合うのはC社だ」と、はっきりと実感されたようです。
05_【自己分析を最終面接で深掘される】B子さんが大切にしていた価値観

B子さんが大切にしていたのは「チームワーク」を意識した仕事の進め方でした。
そのため転職先に対しても、以下のような風土を求めています。
- チームとして協力し合いながら成果を成し遂げられる組織
- 広い視野を持ち、仲間と共に成長できる環境
- 自分のアイデアを実行に移せるチャレンジの場
そして上記の特性が企業内で活かせるか面接で確認されています。
一方で、最終面接では次のような観点が企業側から深く確認されました。
- 「なぜチームワークを重視するのか?」
- 「チームワークだけではない個の推進力が必要とされるが、その点についてはどう考えているのか?」
ご本人はなぜこの点を掘り下げられるのか不思議に感じていたようですが、むしろそこに重要な意味がありました。
B子さん自身、出されてきた成果は非常に高いものでした。
最終面接時にも、その実績についてはご自身で説明され、また他の面接官からの情報でも役員は得ていたはず。
それはご自身の「一人で突っ走りすぎてしまう」という弱点を認識していたからこそ、チームの視点を持って粘り強く協働することで成果を最大化してきた――
そうした強みを、あえて裏返しで見られるような質問をすることで、ご本人のお人となりを含めて確認されていたのだと推測できます。
まるで「尋問」!?最終面接で確認される「カルチャーフィット」は「候補者」にとって問い詰められてると感じることも。

B子さんの最終面接後のお話で特に印象的だったのは、役員からの徹底した「深掘り質問」でした。
- 「なぜチームワークを重視するの?」
- 「では、それはなぜうちの会社で達成できると思うの?」
- 「なんで?」
- 「なんで?」…
答えても答えても、さらに問いが続きます。
一般的な質問かと思いきや、最終的には「もう答えられない…」と感じたところでようやく終了。B子さんご本人は「落ちた」と思ったそうです。
では、最終面接でなぜここまで深掘られるのでしょうか?
理由は「カルチャーフィット」を徹底的に見極めるためです。
最終面接では、転職者の表面的な回答ではない深掘された質問が投げかけられます。
- 実際に取った行動
- そこに至った考え方の筋道
- 複数のエピソードから垣間見える胆力や好奇心
- さらには「その人の精神性」や「エネルギーの根幹」
つまり、面接の場で「強制的に自己分析させられる」という感覚を持つ方も多いです。
実際に投げかけられるのは、例えばこんな問いです。
- あなたはなぜそう考えるのか?
- それを裏付けるエピソードを5つ上げてみて。
- なぜ、そのように考えるに至ったの?
- その思想に至った、原体験はある?
そして、そのエピソードで面接官が見ているのは、以下のようなポイント
- 受け答えや話し方に本音がにじんでいないか?
- どのような考え方で、どのように行動する方なのか?
- チームワークを発揮できそうな方なのか?
- 深い対話で追い込まれたとき、どんな反応をする方なのか?
最終面接は「スキル」だけではなく、
「人となり」「行動原理」まで丸ごと見られる場。
人によっては「強制的な自己開示」とも思えるくらい、考え方・思考・姿勢まで丸裸にされるように感じます。
驚かれる方も多いですが、この視点を知っておくだけでも準備の仕方は大きく変わります。
まとめ ― 読者へのヒント

今回のB子さんの事例から学べるのは、求人票の条件面だけで判断するのではなく、「自分の価値観」と「企業の風土が合っているかどうか」 を重視することの大切さです。
実際に選考を受けてみることで、各社の透明性や雰囲気の違いがはっきりと分かれ、「自分が本当に力を発揮できる環境はどこか」を実感できたのです。
求人票からは分からない部分こそ、面接や社員との対話を通じて確認する必要があります。
転職は「待遇を選ぶ」だけでなく、「どんな仲間と、どんな価値観を共有して働くか」を見極めるプロセスだといえるでしょう。
■転職活動で真似できるポイント5つ
最後に、今日から取り入れられる実践ポイントを5つまとめます。
- 求人票は「条件+価値観」で読む
- 職務経歴書は“性格(人となり)”が伝わる設計に
- 面接で“雰囲気”と運用実態を確かめる
- 強みだけでなく“弱み”も、エピソードで語れるように自己分析
- 条件不安は“情報→確認→提案→言語化”で交渉
以下で詳しくまとめますね。
① 求人票は「条件+価値観」で読む
A社・B社は商材を“商売の手段”として扱う温度感が面接からにじみ、B子さんの心には強く響きませんでした。
一方C社は、事業目的と採用要件が一致し、同じ目的を共有する人材が集まる土壌が読み取れました。こうした環境では、条件やスキルだけでなく社風との相性が評価の軸になります。
チェック習慣
- 「どんな人を求めているか」が具体語で書かれているか
(例:行動指針・価値観・求める姿勢) - 「誰と働くか」が想像できるか
(部門連携・顧客距離・意思決定の速さ) - 文面の熱量
(主語が“会社”だけでなく“私たち”になっているか、使命や目的が語られているか)
② 職務経歴書は“性格(人となり)”が伝わる設計に
成果だけでなく「どう動いたか」「どんな姿勢で臨んだか」を書きましょう。
- Situation:状況
- Task:課題、役割
- Act:行動
- Result:結果
- Learning:学び・再現性
【STAR+Lのテンプレ】
(状況)の(課題)に対し、(役割)として(行動)。
その結果(数値・質的効果)となった。
以後(学び)を得たので、(行動)を行い(再現)することができた。
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③ 面接で“雰囲気”と運用実態を確かめる
質問例
- 「実際の職場を見学できますか?」
- 「日常で最も連携が多い部署と、そこでの意思決定フローを具体的に教えて下さい。」
- 「活躍する方の共通点はどういったものですか?」
観察ポイント(言外のサイン)
- 返答の具体性/即答か持ち帰りか
- 表情・間・視線。面倒くさそう?それとも前向き?
- 実際に調整へ一歩進める行動があるか(見学日程の提示 等)
これらの細やかな所作に採用観・企業風土が表れます。
確認するポイントは、その質問を投げかけた後の相手の表情や反応です。
「ちょっと確認しますね」という言葉の言外の意味を感じ取ってください。
ネガティブ寄りの印象なのか、それともポジティブよりなのか? 実際に調整をかけてくれるのか?面倒くさそうにしていないか?
こういった感情や視線の動き、間のとり方全てに「採用」の考え方「企業風土」といったエッセンスが詰まっています。
④ 強みだけでなく“弱み”も、エピソードで語れるように自己分析
最終面接はカルチャーフィットの見極め。
抽象的な価値観を、行動の事実で語れるかが鍵です。
カルチャーフィットで確認される質問は、以下のようなこと。
- あなたがどんな人物なのか?
- 何に喜びを感じ、悔しさを感じてきたのか?
- そこでどのような行動を取ったのか?
- あなたがそのように感じた理由は何か?
といった事を様々な角度から深掘りされていきます。
最終面接が「厳しい」と感じられたり「対策できない」と感じるのも、そういった背景から。
役員は、過去にたくさんの従業員を見てきています。
そして、たくさんの退職した従業員や、活躍している従業員のマインドセットや、エネルギーの源泉を見ている。 だからこそ、一番見たいのは「あなたの意見」ではなく「あなたが行動したこと」。
- 様々な事象に対し、何を感じて、どのような行動を取ったのか?
- そして、我が社をどのように見ているか?
- 我が社を見る目線に、大きな誤り(認識相違)はないか?
自身の具体的行動を説明し、それを抽象化させて、企業分析とかけ合わせ、一致していることを探る…そのために「あなた」自身の徹底的な自己分析が必要になります。
⑤ 条件不安は“情報→確認→提案→言語化”で交渉
今回のC社は契約社員である点以外は高いマッチングが想定されました。
「契約社員」だから、そもそも選考を受けない。という価値観もありますが、B子さんの中ではご自身のスキルを発揮するためには「カルチャーフィット」が不可欠だと判断されていました。
そのため、選考の中ではあらゆる可能性を模索しています。
- 契約社員からの正社員登用実績はどうか?
- 場合によって、業務委託として参画させてもらえないかという打診の準備
- そのための提案資料作成
結果的に「契約社員スタート」というネックは、面接の場で丁寧に確認し、不安点は解消されました。
そのため「業務委託で契約できないか?」といった交渉までは必要ありませんでした。
ここから学べるのは、やはり「ご自身の価値観を棚卸しした上で、応募企業を選ぶ大切さ」です。
もし「契約社員だから…」という一点だけで応募を避けていたら、今回のようなご縁にはつながらなかったはず。
条件面にとらわれすぎず、自分の価値観と照らして本当に合うかどうかを確かめることが、転職成功の大きなポイントになります。



